リヤドシーズンの最中インタビューに応じた際に、「中谷戦も分からない」とのコメントを残し、井上尚弥のフェザー級転級が前倒しになるのかとボクシング界隈をざわつかせていました。
ピカソとの試合前のインタビュー動画。遊園地に連れていくって言ってたのに急に無理かもと父親が言い出した程度にはショッキングでした。でも彼は良きパパなので代わりにゲーム買ってやるとかの新たな提案があったはずです。
一部アンチからはSバンタム初戦となる中谷潤人のパフォーマンスを見て、彼が強すぎたら逃げるために布石を打ったともいわれていました。中谷の出来が微妙だったから井上は試合に応じることにした、とのことです。
一般的な見解としては、中谷選手の対戦相手であったセバスチャン・エルナンデスの強さをスパーリングで知っていた井上サイドが、中谷が負けるパターンもあると考えての発言だった(負けてしまえばビッグマッチは消滅するので)、ということになります。
サウジ絡みで大きなお金が動く別の試合のオファーがあったのではという声もありましたが、今現在は中谷戦を5月に行う、という方向で動いているようです。逆にインタビューでいっていた前倒ししてのフェザー級挑戦はなくなりました。
大橋会長まで試合前に同じようなことを言っていたので、我々ファンは結構混乱してしまいました。個人的にも中谷が負けた場合を考えてのお二人の発言だったとは思っていますが、真相はちょっと分からないです。
リヤドの介入で混乱した説もありえそうですが、彼らのおかげで我らが井上尚弥は数十億レベルで稼げて注目度も上がっていると考えると、そこに文句を言うのも違う気がします。
こちらは同じタイミングでの大橋会長のインタビュー。最後はタンクと試合したい然り武居は天心に勝てない発言然り、この方はプロモーターなので本音と建て前をかなり使い分けています。
フェザー級に上げない理由
・フェザーで戦う体がまだできていない
・エスピノサから逃げている
・中谷潤人のあとはバムを迎え撃つプランがある
・既に大金を稼げている
よく言われているのはこの4つです。
フェザーで戦う体ができていない
井上尚弥は既に4階級を制覇しており、始まりはライトフライ級で現在はSバンタム級なので既に5階級上げています。現在の体を見ても軽量級のボクサーとしては筋肉の隆起が際立って目立つ状態なので、ここからさらに増量してボクサー仕様の体を作るのはそう簡単ではありません。
(話は変わりますが、フライ級を制覇していれば既に5階級制覇、引退間際にSフェザーで穴王者と対戦して史上初の7階級制覇も狙えました。フライ級スキップは大橋会長と井上尚弥の痛恨の極み!)
井上尚弥のキャリアの歩みや発言を見ていると、ベストな階級でベストな相手と戦う、というのが彼の美学や信条であることが伝わってきます。
我々無責任なファンは、敵がいないのだからさっさと階級を上げて緊張感のある戦いを見せてくれと要求してしまいがちですが、メイウェザーもいっていたように引退後に後遺症が出てもファンは責任をとってはくれませんし、これはボクサー本人に委ねられた権利です。
ただしまあフルトン戦以降、欧米での注目度が伸び悩んでいることは事実であり、階級をあげないことによって生じる不都合もあるというのが現実ではあります。
エスピノサから逃げている
でましたエスピノサです。
逃げているいう言葉は非常にネガティブなので、表現をかえると避けているという可能性はあると思います。でもこれ仕方ないですよ。身長185cm、リーチ188って井上尚弥とはそれぞれ20センチぐらい違いますから。Sバンタム初戦で最強格だったフルトンと戦ったわけですから、井上尚弥は本来は勇敢なボクサーです。
メイウェザーやパッキャオだって現役時代の世界戦レベルではこのサイズ差を経験していません。パッキャオが戦ったバリオスが180センチ、メイはデラホーヤの179cmとかそんなもんで、二人ともやはり苦戦していました。
パッキャオはサイズ差を無効化する前後の神速ステップがありましたが、メイウェザーや井上は極力ギリギリで見切って最小限の動きで処理したいタイプなので、極端にサイズが大きい相手だと、本来のスキルが発揮できないんですよね。
’(パッキャオは大きく出入りする分、凄いカウンターを食らうこともありました。ここはもう一長一短です)
ディフェンス技術と比べると、火力の強さ(と打たれ強さ)というのは階級を上げると相対的に弱まってしまう傾向にあります。
でディフェンシブなメイウェザーと違って、井上尚弥は好戦的で常にパンチに力を込めて打ちたいタイプで重心が前にいくことが多いです。これはもはや彼の美学ですし、我々もそれで彼を大好きになっているわけですが、これは体格的にミスマッチとなる相手との闘いでは不利に働きそうです。
階級を上げてもボクシングIQやポジショニングやタイミングなどのスキルは据え置きですし、スピードも大部分は維持できます。
スペシャルな地力もあるので勝ってしまう可能性も普通にあるんですが、求道者的に完璧なパフォーマンスを求めているように見える井上尚弥が、自身が求めるボクシングとは違う試合になりそうなエスピノサとの闘いを避けたいと考えていても不思議ではないです。
エスピノサから逃げているというよりも、チートに付き合いたくはないという心理状態かもしれません。
(井上も実力はチート級ですが、それらはスキルに裏打ちされたいわばプログラムとしてインストールしたものであり、エスピノサの体格的なチートはエラーみたいなものなので、ここは明確に違います)
といってもエスピノサの強さは誰もが認めるところであり、滅茶苦茶強いです。
身長制限がないというルールの穴はついていますが、ルール違反を犯しているわけではないので、仮に戦って負けてしまえば井上尚弥の評価は相応に落ちてしまうでしょう。
井上尚弥のボクシング技術は完璧ですが、今のところは「ある程度同じ体格の相手」に対してという条件がついています。(マクドネルを倒してはいますがあれは根本的に実力差がありすぎました)。
もしも戦って勝てばその条件が取り外され、「いかなる相手にも無敵を誇る完璧なボクサー」として更に格上げされるハイリスクハイリターンの試合になりそうです。
中谷潤人のあとはバムを迎え撃つ選択
ジェシーロドリゲスことバムが井上尚弥とSバンタム級でやりたい意向があるようで、これは本人や陣営も発言しています。
バムは現在スーパーフライ級なので、ここからいきなり2階級上げて井上戦というのはバム側にとってはかなり厳しい条件になると思いますが、どうもバムはメンタルに難があるタイプのようで、井上戦は手っ取り早く大金を稼いでリタイアしたいというバムの下心的希望を満たす試合になるようです。
PFP級の選手が2階級上げて強敵と戦った試合といえば最近ではクロフォード対カネロ、ちょっと前にリゴンドー対ロマチェンコがありました。前者はクロフォードが圧勝し、後者の試合はロマチェコが圧勝。やはりより不純な動機があると負ける確率は上昇します。
したたかなクロフォードと違い、リゴンドーは大きな試合ができずに止む無く全く未知数のスーパーフェザー級に挑んで惨敗していましたので、バムも焦って上げるようだと井上尚弥相手には勝てない気がします。
ただしビッグマッチになることは間違いなく、井上尚弥にとっては悩ましい問題になります。
現実問題フェザー級にはPFP級のボクサーはいませんし、中谷の次にPFP上位のバムを倒しておくのは、井上のレジュメをさらに補強してくれます。将来的にライト級までいく予定はないでしょうから、少し遠回りするだけでPFPランカーを二人倒せるというのは、コストに見合った選択にはなります。
リヤドシーズンにももってこいですし、バムが本気なら実現する可能性はありそうです。そしてこの試合の実現は、井上尚弥がフェザー級に上げるタイミングに大きく影響します。
既に大金を稼げている
年収100億円との話もありました。井上尚弥がお金のためだけに戦っているわけではないですが、プロモーターやジムなど彼を取り巻く大人たちにとってはより重要な要素であり、井上尚弥本人にとっても全く無意味なものではありません。
外国人ボクサーがサクサク階級を上げるのも、これが大きいです。で名誉とお金というのは通常この世界では比例するので、海外のスペシャルなクラスのボクサーは限界まで階級を上げて戦います。
ところが井上尚弥は軽量級としては、既に限界を突破した破格のファイトマネーやスポンサー収入を得ており、仮にフェザー級に上げたところで倍々ゲームのようなことにはならないです。(ならないよね?笑)
お金という面での動機が他の選手より弱いという事情はあります。
中谷戦やります
フェザー級挑戦は後回しになりましたが、ボクシングファン待望の中谷戦はやることになりそうです。
我々ニワカファンの間では勝負論が薄まった感がありますが、元世界王者の岩佐さんは7:3で井上尚弥有利と、それなりの勝負論を支持していました。
中谷にとってエルナンデスが相性最悪、井上にとって中谷はやや相性が悪い相手、ということであれば面白い勝負になるでしょう。辰吉丈一郎vs薬師神保栄、畑山隆則vs坂本博之、あとはキックの那須川天心vs武尊を超える日本人対決を期待しています。
ニック・ボール戦どうなった
フェザー級に上げてニックボールと戦う→バンタムに戻して中谷戦、というプランもあったようですが、現在は白紙になっています。カルデナス戦でダウンしたことが影響したのかもしれませんが、次戦ではアフマダリエフを完封していました。
ニックボールにはSバンタムのままで勝てる気がするので、やっておいても問題なかったと思います。ボールはグッドマンといい試合をしてしまっていました。
体重の増減によるリスクといっても、Sバンタム仕様で勝てるわけですから減量を加減するだけです。体への負担は通常の試合と変わらない気がします。まあ井上サイドの意向だけで決められることでもないので、その他の事情があったのかもしれません。
そのボールは次はフィゲロアと試合するみたいですね。あとは亀田和毅や亀田京之介も上の階級でウロウロしているので、色んな意味でフェザー級戦線には注目です。井上尚弥が上げたときにより楽しむいい予習になること請け合いです。
フェザー級挑戦はいつなのか
順調にいけば2026年になります。2025年は4試合して負担が大きかったこともあり、今年は2.3試合になる予定で、そのどちらであっても2026年の12月になる可能性が最も高いです。
一番可能性が高いAパターンは、中谷戦を勝ってクリアして12月にボールなりフィゲロアなりのフェザー級王者とタイトルマッチ。誰かが統一していればその選手が井上戦のプラチナチケットを手にするでしょう。
(エスピノサなら初戦はまず回避すると思いますが、そもそもエスピノサは他のフェザー王者からも敬遠されて統一はできなさそう)
中谷に負けてしまってあげるBパターンも考えられます。リヤドでの試合を見た限りでは可能性は低そうですが、勝負は相性やその時のコンディションもあるので、こればかりは0ではありません。
上記2パターンが最速での転級となります。Sバンタム級戦線が一気に活気づくでしょう。タパレスなんかもランキングを維持して井上のベルト返上に備えていますし、ネリやバンタム級では減量苦である武居や天心などもあげてくれば、かなり面白くなりそうです。
CバターンはバムをSバンタムで迎え撃った後に挑戦。バム戦はやる価値はありますが、こうなるとフェザー級挑戦は2027年にズレこんでしまいそうです。
あとは特に大きな目標はないけどSバンタムに留まるDパターンも0ではないです。こうなるとファンはがっかりかもしれませんが、こればかりは本人が決めることですし、何より起きてもいないことで批判するのはよろしくありません。
以上4つのケースが考えられます。50~60%ぐらいの確率で2026年12月あたりにフェザー級の試合をするのではないかと予想しています。その時を楽しみに待ちましょう。

